明倫茶会のお礼 / 行っときたい展覧会 / キベラ"スラム"展@BUGの展評

明倫茶会ありがとうございました。BUGのキベラ"スラム"展のレビューは自分で言うけど結構いい仕事したと思うのでぜひ読んで欲しいです~。
中村融子 2026.07.09
誰でも

梅雨が明けたらしい。みなさまいかがお過ごしでしょうか。私は今年の梅雨も体調が悪かったけど、梅雨にしては動けたなって感じです。

Instagramで脱植民地化Podcastのことを投稿したら再投稿してもらったみたいでフォロワーが増えた。色んな人が色んなとこでそれぞれ頑張ってらっしゃる。「連帯」というか、まじで、なんか総数を増やしたいみたいな段階ですね。

今回は、明倫茶会のお礼、みておきたい展覧会、私が書いたレビュー(ケニアのキベラ”スラム”を舞台にした映像・写真の展覧会@BUG、東京)のお知らせです。そして最後にガザの募金もあります。記事は無料の気楽なものですが、ちょっとでも参考になった方は最後の募金にご協力いただければ幸いです。

お礼:明倫茶会

このメルマガでお知らせがそんなにできていなかったけど、薪窯の会が席主を務めた明倫茶会「土味の三角測量」@京都芸術センター、多くのお客様にお越し頂き無事に終わりました。ご来場いただいた方、チラシの配架など告知にご協力いただいた方、ありがとうございました。

自分のインスタにも書いていますが、当時のレポート写真や展示の様子をお知らせする動画などを薪窯の会SNS等で順次公開しているほか、記録冊子を8月の五条若宮陶器祭にて販売予定です。2024年の夏にはじめて、紆余曲折ありながらもだんだん形になってきた薪窯の会。今後もぜひご注目頂ければ幸いです。

0: Vessel Forms(うつわのしせい)@gallery La Chicca(ラ・キッカ)

お知らせしなきゃと思っているうちに終わってしまった……が、7月の展示との関係もあるのでお知らせ。2026年6月28日(日)〜7月5日(日) 12:00〜19:00  https://g-lachicca.com/

熊野神社のすぐ横で、実施された京都精華大学・京都芸術大学(旧造形)の陶芸分野の学生・教職員による交流展。昨年度から非常勤として論文・リサーチの指導をしている京都芸術大学院陶芸分野の院生さんが参加されていました。福本双紅先生にお声がけ頂いて着任して、今に至るのですが、初めての美大、商業化の進む今まで私が居た大学とはかなりカラーの違う大学でもあり、色々な経験をしました。時間があるときに振り返ってみよう。

留学生を含めて本当に熱心な院生さんが多く、私も勉強になることが多いです。教職への興味は「経験として必要あれば…」ぐらいだったけど、やってみたらこれは自分のためにも必要だし、とても大切な仕事だなと思うようになりました。

陶磁を用いつつ広く造形表現を探る専攻ですが、今回は「うつわ」を軸に多種多様な作品が提出されています。一年生には初めての展示機会でしたが、今年の一年生は、面白い発想から短い時間でリサーチを重ねてコンセプトを熱心に改良し、既に技法との整合性も高い作品を提出していました。二年生は、修了制作優先っていう感じでしたが、最近新しい方向性を試していた李さんの陶板作品がめっちゃよかった。7月16日から瓜生山キャンパスでSPURT展という二年生による大規模な中間発表展もあります。ぜひお越しください。

技官助手や教員も出品されていて、普段大きな空間を活かして展示されていることの多い福本先生や吉村先生の作品が詰め詰めの空間に展示されていたのも美大の教育展示としてのおもしろさだったなと思います。薪窯の会の山田真也さん(大阪芸大の彫刻出身で陶磁を扱いはじめている)も参加してて、バンジー茶碗という作品を出していたんだけど、ステートメントがめっちゃよかったな。明倫茶会に作ってくれた茶器の「制作日誌」も人気だったし、山田さんのコンセプトシートは詩として良い。 ご本人は造形がやりたいわけだしこれから発展があると思うけど。

1:世田谷美術館 「MEMORIES OF WEST AFRICA ふたりのアフリカ、手仕事の宇宙――人類学者・川田順造と陶芸作家・小川待子のコレクション」@世田谷美術館

(2026年7月11日~9月6日) https://www.setagayaartmuseum.or.jp/exhibition/special/detail.php?id=sp00229

(実は博論副査もして頂いた)中尾世治先生のプロジェクトに関連したこちらの展示も大変楽しみ。 小川待子さんは、近年のクラフト的転回(craft turn)の中でアジア人女性、やきものという素材の交差性から、ルース・アサワやトシコ・タカエズなどの再評価に続き注目される存在でもあります。…ということを私の周りの研究畑の人は知らないけど、逆にやきものや美術の関係者は小川待子さんの夫が高名な人類学者であることを知らなかったりします。それぞれが○○の妻/夫ではなく、独立して評価されていることは素晴らしいことですが、「ジョンとヨーコ」的な部分もあると感じているので、お二人の仕事の二人としての側面を切り出される画期的な企画、大変楽しみです。

2:陶芸の森 特別企画展「炎との対話から 私の自然釉-神山清子展」@滋賀県立陶芸の森 陶芸館

(2026年6月13日~8月30日) https://www.sccp.jp/exhibitions/21521/
数年前の朝ドラ「スカーレット」の主人公のモデルでもある神山清子さんの回顧展。神山さん(1936年生)は小川さん(1946年生)の10歳上です。小川さんが藝大、パリのメチエ・ダールと進まれ、西アフリカに滞在されるなど、同時代の国内の制度的な意味での「陶芸家」を飛び越えたような存在だった一方、神山さんは「女流陶芸家」になることさえためらわれたなかから作陶を始め、男性的美学とされた薪窯焼成による焼締陶を追究し体現する女性作家の先駆者のお一人となられ、信楽で尊敬を集める存在です。

陶磁業界での女性への強い制約はもちろん、窯元の絵付け職人として仕事を始めたという背景もありました。また、火鉢の低迷により退職、キャリアの初期はクラフトデザインの巨匠たちに指導を受けるなど、信楽特有の産業としての陶業との交わりが色濃くみられます。 世田美の展示と本展は意図して同時期に開催されているわけではないと思いますが、近い世代の、全く違う階層の女性が歩んできた人生にも思いをはせる機会にもなるでしょう。7月18日(土)の信楽火まつりや、産業としての窯業や地学的背景まで扱った伝統産業会館も合わせてお出かけ下さい。

そして、7月10日~12日までガーナから来たレジデンス・アーティストのVincent Frimpongさんの小さな成果展示も実施されているそうで、ちょっとこれは見ときたいですね。
https://www.instagram.com/p/Dae4bS-E15Y/

ガーナから来て、ンクルマ科学技術大学出身、アーカンソー大学(アメリカ)でセラミックのMFAを取得して、今はアメリカに拠点を移しているとのこと。ガーナのモダニズムの系譜とアメリカの前衛陶芸文脈が彼の創造性の中でどう交差しているのか…。写真で見ただけですが作品も面白いですね。

3:林康夫 令和8年度 大阪芸術大学所蔵品展「林 康夫-現代陶芸のパイオニア」@大阪芸術大学博物館

戦後前衛陶芸の先駆者であり、走泥社に先んじて得四耕会を立ち上げたことも有名な作家による、長く教えてきた大阪芸大での展示です。先日、ご本人によるトークイベントが終了したそうで、今もお元気で後進に力強く語りかけられたそうです。ここでも、デザイン学科との関連があります。また、大阪芸大の後任の現代陶芸の先生方は、国際的に現代陶芸をユニークな形で探究されるという特徴があり、その中にアフリカのやきもので知られる森淳先生もいらっしゃいます。

このようにやきものは、階層や美術・工芸の制度的区分、地域を飛び越えてどこにでもあり、その中にさまざまな人生があります。それがinternationalでもglobalでもなく" terrestre "ということなのかもしれません!(ンベンベの地球共同体の邦訳、注の入れ方も含めて感動的に読みやすかった。ンベンベをこんなに楽に読める日が来るなんて。)

そういった系譜に繋がる院生さんの挑戦を見届けていると思うと非常にアツいものがありますね。SPURT展、ぜひ来て下さい~

4: 「キベラ"スラム"から見つめる世界―語られてきた私から、語る私へ。―」 展評 

リクルートがやっているアートセンター・BUGで開催された展示のレビューを執筆しました。ケニアのキベラでの社会開発事業から派生した写真・映像展です。

「アートにしか開けない扉などあるのか:植民者の安全地帯から踏み出して」 

 社会開発的な事業から派生した企画であり、いわば「駆け出し」のアーティストを多く含む展示で、アートの人からみたらキュレーションや文脈づけが弱く見えるかもしれない展示だった(実際そういうストーリーズの投稿を見かけてちょっとそれに反応したりしたわけですが…)けど、現在使えるような「文脈づけ」に使える語彙自体が、反帝国主義とかポストコロニアルなものも含めて(ここ重要)キベラにいるような人を疎外しながら作られてきたものでしょうよって話をしなきゃいけないなと思って書きました。

 その上で、直接アートの話をしていないにしろ、松田素二が都市について、そして都市を語る知の構造について、同じ話をまさにナイロビを主題としてしているわけだから、美術業界の人は読みましょうやという意味も込めている。逆に、地域研究・アフリカ研究の人達は、現代美術とかどうせ西洋/エリート的なものでしょっていう突き放し方で終わらずに、文明・野蛮の区分の問題として捉えて、文化の主体性のために戦ってきたアフリカの人達の歩みを知るべきだし。

 英語圏ポスコロ的なものと、地域の乖離(あるいは地域が生み出した言葉の簒奪)っていう問題は、地域研究者として色々忸怩たる思いをする経験もしたけれど、『だえん』の寄稿文と、それに対するきりとりめでるさんのartscapeでの評価 を経て、もっと大声で言っていこうと思うようになりました。さらにいえば、『だえん』について昨年末にインスタライブしたときに、『だえん』編集部のお一人でもある鈴木萌夏さんの「注をいっぱい書く感じの文章が好き」という趣旨の発言に励まされて今回の感じになったという経緯もあります。

 「文脈」に話を戻すと、あり得る「文脈づけ」を可能な限りしたのがこのレビューの文章になると思いますが、そもそもここで引いている文献を全部読んでいる人も日本にどれだけいるだろうかって感じだし(前段落で書いたように、アート側の人は地域研究を読んでないし、地域研究の人はアートの方を読んでいないことが多い)、地域研究の話はやはり滞在して人や空間と関わる経験によってはじめてわかることもあるし、さらにそれを展示でどうやるか、作品鑑賞と同時に情報をどこまで前景化するかには、文中にも書いたとおりジレンマもあり、まじで簡単ではない。

 そして、自分も最近文化実践に手を出しはじめ、そしてビザの問題なんかも知るようになって痛感するのですが、このキベラ展を実現させる運営自体がま~~~じでめちゃくちゃ大変だと思う。内容の好みなり志向なりの違いとかは人によってあるだろうけど、坂田さんが偉すぎるということは誰も否定できようがないなあとレビューを書いて改めて思いました。

 ちなみに、中垣さんにレビューの内容と関連して、まさにナイロビ出身の人の書籍「No Place Like Home in a New City:Anti-Urbanism and Life in Nairobi」を教えて頂きました。このレビューを送った中村達先生から所属の意識とパワー(権力)に関するラミングの引用も教えてもらった。またこのプロジェクトが続いていくなら、その作品を見て、もっとケニアや東アフリカの言葉から学びたいですね。

 そのうち英語の翻訳も出るっぽい。インスタでも宣伝しなきゃいけません。

 BUGが(おそらくキュレーターの檜山さんのご提案で?)私にレビューを頼んで下さったのもありがたかったですね。私は自分のやっていることと矛盾しちゃう仕事は選ぶし文句も言う方だから、引き受けた仕事は頑張りたいし。キベラ展の直後のドゥーリアのボールルーム展もかなり魅力的だったし、BUGさんでは多様な担い手による展示を開催して、全部に細々介入するわけではないが、アートセンターとしてしっかりしたケアをされているというバランスも素敵だなと思いました。

 今やっている「In-dividual Theater:BUG Screen Week 2026」(7/3〜7/12、7/7休止、入場無料)という企画は、スタッフが選出した17名の作家による映像作品を上映するもので、私の知人で尊敬するアーティストのマヤ・エリン・マスダさんの映像も入っているみたい!映像作品をどう見せるかをトークなども並行して実施している、いい企画だなあと思いました。

 勢いで書いていたら長くなったけど、そんな感じです。知の脱植民地化の意図を汲んだお仕事だったら責任持ってやりますので、何かあればお声がけ頂ければ幸いです。

ガザへの募金

最後に、占領がどんどん進むパレスチナで、爆撃もまだ続くガザ地区に暮らす若者への寄付はいつでも募集中です。経過は基本的にInstagramでもっともマメに報告しています。今回は、一昨年市民防衛隊のオフィサーだったお父様を亡くされた18歳のMalekさんの募金を貼っておきます。以下のリンクからよろしくお願いいたします。

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