近況 / 五条若宮陶器祭+α

知り合いのフランス人陶芸家にオススメするリストを作ったついでに、私が日本にいたら絶対行きたかった!というブースを列挙します。あと同時期にやってる素敵なやきもののお店屋さんも。
中村融子 2025.08.08
誰でも

本題の前に近況とお知らせ:ベナンにいます

全ての告知が遅れている…日本はとてつもない暑さだそうですが、皆さんご無事でしょうか?バタバタと所用に片を付け、私は6月下旬にフランスの薪窯の村に行き、7月から二か月間ほど、ベナンのコトヌを拠点に調査をしています。去年同様、アートセンターのレジデンスを活用しています。

あと、Podcast始まっています!こちらのリンクから聞ける媒体でお聴きください。インスタもあります。https://lit.link/gsdecolonize2025

フランスの薪窯の村については、これもやきものを通じた文化の脱中心化の一環で研究してきたのですが、それを実践に移そうということで陶芸家・アーティストのみなさんと「薪窯の会」という団体を立ち上げました。とはいえ色々難しいことがあり、メンバーや色んな方の助力を得てようやく任意団体として軌道に乗り始めました。とりあえずウェブサイトはこちら。この話はまた詳しくします&SNSなどがうまくオープンされたらまたシェアします。

さて、ベナンの渡航について、今年はキャノン財団・ヨーロッパのポスドクフェローをもらっているのですが(今年のフェロー紹介のページ、一人だけプロフィール写真が証明写真すぎてアレ)、今年も同じ財団のJapan Africa Programの募集が始まっていて、さらに去年まで「京都大学と提携校」という縛りがあったのが、全大学に開放されました。身の回りに興味がある方がおられたらシェアして下さい。

五条若宮陶器祭+α

京都の五条坂周辺で、8月7日から10日まで開催されている陶器祭です。「だえん」への寄稿などでも書いた通り、私は近年各地で行われている新しい「陶器市」の試みを、美術と工芸の近代的な二項対立(とそれに結びつけられた概念の配置)や、制度化されたナラティブを超える、ラディカルな実践でとても重要だと考えています。

五条若宮陶器祭は、同じく五条坂で春に開催される五条やきもの市と並んで、京都の「やきもの」に関わる多様な在り方を反映し、また地域の文化資源を観光のまなざしに迎合することなくしかし幅広い方に楽しんでもらうような催しとなっており、大変オススメです。


ちなみに私はその昔の五条坂の様子や若宮八幡宮の夏祭りについては知らないのですが、父親は子供の頃この辺に住んでいて、リバイバルとしてのこのお祭りの意味も感じられるみたいです。日本にいたら行きたかった…!ちゃんと暑さを避けられるよう、夜10時までやっています。夜の陶器神社も素敵だろうな…。

特に、今回京都東山図書館がイベントとして関わっているのがすっごく意義があると思う。素晴らしすぎ。公共図書館とはこうあるべきだし、主催の方も素晴らしいし…。(図書館含め関連イベントの詳細はこちら→https://toukimatsuri.com/events/)世界規模で脱植民地化とか脱中心化を考える中で、図書館の役割、美術と図書館の協働の実践を改めて色んな形で大事にしないと考えてたところでもあり。そういうグローバルな文脈でも注目企画と言えます。

オススメのブースたち

6月にフランスの薪窯の村に滞在してた時に出会ったフランス人の陶芸家の一人が、この時期に日本に旅行しているということで、このお祭りを薦めたらぜひ行きたい!と言ってくれました。そういうわけで、彼に宛てて簡単なオススメリストを作ったので、せっかくなので日本語に直して皆さんにも共有します。

※冒頭についている数字は、陶器祭がそれぞれのブースに公式に割り当ててるナンバーです。たぶん配布されてる地図にもその番号があると思う。リンクは、統一して陶器祭公式Instagramのリンクを貼っています。そこから各作家・アーティストさんの個人アカウントにも飛べます~。

▲まずは、上記の薪窯の会のメンバーが関わっている出店ブースたち

  • 22. 23: Ceramic Atelier ABUMI

東山にある陶芸のシェア工房で制作する若手作家4人によるブース。SNSで拝見した、川上さんの茶器が気になる。(道具と作品の密接なかかわり方がすごく印象深い作家さんです。)

この中では吉田瑞希さんが薪窯の会の現メンバーです。地域資源に取題した制作を始め、地域の場づくりにも関わっておられる吉田さんには、本当に色々と勉強させて頂いています。ちなみに吉田さんが関わっておられるココナガヤという、陶器屋さんの倉庫や轆轤師さんの工房をリノベした職住一体空間があるのですが、そのコモンスペースが休憩所として利用できるそうです。こちらもぜひ。

ココナガヤのことは私も帰国したらめっちゃ教えてもらいたいと思っています!し、その予定!

  • 12: のんのん 

柳生梨音さんによるブース。器や小・中サイズのオブジェ以外にも、普段は、陶の細かいパーツで"織りなす"布や、それをさらに組み合わせたドレスの制作・パフォーマンスもなさるアーティストです。(柳生さん個人のアカウントにアーカイブがあります。)少女文化の文脈にもある制作と陶芸の関係がとても魅力的です。

  • 8: 廻窯舎

京都の桂にお店・工房を構える、多賀夫妻によるブース。ちなみに場所が、なんと私が高校まで住んでたマンションのすぐ隣でびっくり。マットな肌の器のシリーズが中村的に好きだったのですが、最近信楽の薪窯で焚かれたシリーズがかなり気になる!見てきてください!
廻窯舎さんとは、妻の楓夏さんが薪窯の会に所属してくれたことで初めて知り合いました。夫の洋輝さんの独特のバックグラウンドから来る陶芸への取り組まれ方も興味深いのですが、楓夏さんの、京都以外のご出身から京都の文化への洞察がすごくクリティカルで(まだ公表してないけど)ある企画を一緒に進められるのが楽しみです…。

  • 24: 生華窯

浅井慶一郎さんによる窯元、生華窯。食器のシリーズが中心のご制作です。確かな技術と経験の蓄積をお持ちで、そんな実力から生活にすっと入ってくる食器を作られていてすごい。ちなみにうちの母は浅井さんの白い輪花皿を購入し、なんでも合うからと週5ぐらいで使っています。

薪窯の会のメンバー同士で、昨冬、宇治の山中の工房にもお邪魔しましたがご自身での環境のセットアップぶりがすごかった。もう全ての経験値が高すぎて頼りになりすぎる。SEIKAシリーズとは別の作品もとっても美しいです。フランスにもお世話になった方の追悼のために浅井さんの高杯を一つ持って行ったのですが、大変好評でした。同じ世代で理系のバックグラウンドを持った方の、薪窯や陶芸へのこういう向き合い方ってすごく面白いと思う。

  • 75,76: 京焼・清水焼 陶葊(とうあん)

京焼・清水焼の長い歴史を持つ京都の工房です。現在も工程ごとの分業体制で運営されていて、職人として働くお一人である土岐さんが、薪窯の会に所属して下さってます。こちらも昨冬見学にお邪魔したけど、ろくろ・鋳込み・施釉・焼成・絵付け…と各工程のプロがそれぞれ集中しながら大規模で操業されている様は迫力がありました。そして「あ!あの名店のカップ&ソーサーってここの!」ということもあり…。観光向けだけでなく、京都の文化を支えている窯元さんです。

こういった分業制工房と、美大卒アーティスト、個人作家や伝統工芸系の方が一挙に集まっているから京都は面白い。し、それらが一堂に会するこの陶器祭も面白く意義深いですね!

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▲その他の中村のオススメ。

  • 5: いきいきいっしょ生活 

京都でも注目の若手アーティスト3人によるブース。立体作品はもちろん、インスタレーション、演劇的な表現までされてきた皆さんですが、ここでは生活を一緒に営む器を販売されています。陶土というメディアに対するコードスイッチングというか、それぞれのフェーズでの合わせ方が面白い。昨年から引き続きのユニットによる出店で、今年は「こんにちはの時間」と「こんばんはの時間」でお店の構成や品出しが変わるそうです!コンセプトメイキングもさすがですね。

  • 53: 中島智靖 

技術と経験が豊富な個人の陶芸家さん。多分一番最初に、京都の同世代以下の若手作家さんから器を買ったのは中島さんの急須だった気がする。まだコロナ禍の頃。食器も茶器も素敵で、折に触れ入手しています。精力的に各地の陶器市に出店されながら多様な制作をどんどんと展開されています。今回はどんな作品が出ているのかな…。

  • 71,72: 泉涌寺青年会(亀京窯)

二年前?の五条若宮で酒器を購入して知った亀京窯さん。「京焼」といえば磁器に華やかな絵付け…というイメージが代表的ですが、京都の焼締陶っていうのもまた特色があって、陶芸は奥が深いなあ…と思います。泉湧寺といえば、戦後すぐから近代的な京都の陶芸家が活動していた場所でもありますよね。その辺の繋がりも気になりつつ、今は勉強不足。今後もっと知っていきたいです。

やきものを研究の糸口にし始めて、こんな風に京都をより深く知り、知らないことも多く見つかったものです。この陶器市でみなさんも知らなかった京都の姿や、新しい問いを見つけて下さい。

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五条坂の陶器祭とは別に、山口遼太郎さんがなさっている「お店やさんごっこ」のアカウントも要注目。京都いたら絶対行きたかったな~!指輪とか魅力的すぎる。

  • TOUMAN(トウマン/ トゥーマン)

8/5から8/11までSocial Kitchenに出店されているそう。だいたい11時~20時まで、
住所:京都府京都市上京区相国寺門前町699

そんなこんなです!ベナン滞在の様子は、体力に余裕があるのみですが、インスタで小出しにしています。

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