「思ってるより一歩左」ー私の投票行動の指針

選挙のたびに聞かれる声に、「ちょうど入れたい候補者がいない」「どの党も正直…」というものがあるかと思います。現在の日本において、他の人とどうやって投票先を決めているか、正直に話し合う環境もあまりないかもしれません。「こういう人もいるんだ」ぐらいの感じで見て頂ければと思い、私の投票の指針について書いてみました。
中村融子 2024.10.26
誰でも

「ちょうどいい候補」いない問題

 2024年10月20日に、私のXでアーティストの奥誠之さんと衆議院選挙について話すスペースを行いました。奥さんは、東京のパレスチナ連帯アクションのほぼ全て(誇張ではない)に参加されてきたアーティストで、2024年5月13日にも美術業界のことやアクションについてスペースで話したことがあります。

 今回のスペースの主題は、大阪4区に自民党から立候補している中山泰秀候補についてでした。彼は強力なイスラエル支持者であり、この期間中も擁護の姿勢を崩していません。中山候補がこの4月に登壇した「スタートアップ」関連イベントではイスラエル軍の国際法違反や人道的な被害には微塵も触れず、"No Matter What"の精神で軍・産・学共同でテック産業を発展させる!と明言していたことなど具体例を挙げながら、この方の当選(比例名簿に載っていません!)を避けようという話をしました。該当する大阪市北区・都島区・城東区・福島区の方は前半だけでも聞いてみて下さい。
時間がない方は、スタートアップ関連イベントのレポート(ここからレポートのnoteに飛びます)だけでも、見て行ってください。

 その後、奥さんと話し続けるなかで、投票先の決め方の悩みを話し合うようになりました。悩みの内容とは、「正直、ぜひとものこの人に投票したい!」という候補が自分の選挙区にいなかったり、選挙区や党の状況によっては、普段の暮らしやアクティビズムで重視していることとは違う方針を採用して投票しなきゃいけなかったり…ということです。

 また、「ぶっちゃけどうやって投票先決めてるの?」と話しあう機会が我々の世代(30前半)でも少ないのも事実です。もちろん、自民党総裁選でも「カツカレー食い逃げ」(※1)が出るぐらいですから、投票の秘密は大切なことです。親しい友人や家族、パートナーに話したこととも全く違う投票行動を自分で取る権利は誰にでもあるし、正直に投票先を話さないといけないってこともありません。しかし、「他の人どうしてるのかな~」を知る機会があまりにない日本の現況を踏まえ、ちょっと自己開示してみようかなと思います。

まともな中道左派政党に誕生して欲しいから「一歩左寄りに」

・選挙区の事情

 私の投票先は京都2区で、「何があっても前原誠司さんが当選」する区として有名です。各機関の情勢報道をみても、今回も前原さんは盤石のようです。立憲も国民民主も候補者を立てず、自民党の新人の佐野英志さんと共産党の新人堀川朗子さんのお二方が2位の席を競っている状況です。(あとは参政党とユーチューバー?の方。)非自民・非共産の勢力が確立しない一員に前原さんの行動があると話す人も多いかと思いますが、それを象徴するような地元の状況です。京都、特に左京区などは共産党が強い地域として知られており、もしかしたら2位に堀川さんがくるかもしれません。

(ちなみに私の生活圏・活動範囲では佐野さんが相当熱心に活動されている印象です。めっちゃ選挙カー見ます。前原さんは維新のスタッフさんは地下鉄の駅で見るけど…まあ余裕なのかなあ。)

三春充希(はる)⭐第50回衆院選情報部
@miraisyakai
第50回衆院選 情勢報道集約 (10月22日更新)
京都府
2024/10/22 22:29
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 私は夫婦別姓や同性婚を始めとした政策に賛同しており、それを頑なに阻む現政権の政策に反対しています。維新については、文化政策が実際の文化や学術の発展・保存を損ねることが多い(特に専門知の軽視を問題視しています)ことに批判的な立場を取っており、さらに吉村議員をはじめとした党執行部の排外主義的な発言にも賛同できないことが多く、この時点で選挙区では共産党しか候補がありません。

 もし、共産の候補がもっと古い世代の高齢男性だったりしたら、私も少し迷ったかもしれません。後述の通り個人的には、左派・リベラルでも日本の高齢権力者男性のジェンダー観はだいたい信用できないと思っているからです。自民の佐野さんは若くてさわやかな印象の候補者さんで、実際に子育てに取り組む世代として、子育て政策などにも尽力されるということです。

 しかし、共産の堀川さんも38歳女性で、選挙用に掲げるスローガンとしてだけではなく、ご本人のジェンダー観やその他の感覚についても、そして何か問題があった時に議論・修正される可能性も含め、信用できると思っています。また佐野さんは京都には結婚を機に来られた方である一方、堀川さんは立命館大学に進学され、その後も京都で活動されているので、暮らしのことや地域のことを話しても(例えば、夏の岡崎公園の日陰のなさはヤバいですよね、とか)感覚が近い確立が高く、京都の代表として国会に送り出したい方だと思えます。

・比例区

 問題は、政党の名前を書く比例です。私の同世代(30前半?)では、リベラル的な政策と現実的な経済等の施策への両立を期待して、国民民主党や立憲民主党に入れる方も多い気がします。京都でも、共産党支持者が多い一方で、蜷川虎三府政など共産党が強かった時代の嫌な思い出を持っている方も多いので(私の親類にもその時代に公務員として仕事していた人が多いのでそういう意見もよく分かる)左派的な政策には賛同しても「共産党への投票はないな」という方もおられます。

 私個人としても、例えば寺田学さんなど、立憲民主党で応援している政治家さんもいます。私の理想の政治は、寺田学さんとか、立憲の吉田はるみさんとか、共産の山添拓さんとかが喧々諤々の議論を交わし、現実的な左派政策が実現されていく…みたいな感じです。政策実現力があり、都市生活者だけではない広い意見を汲み取る中道左派政党の誕生を望んでいるという感じでしょうか。自分がアクティビズムや研究の関係で意見を表明するときも、中道左派的なものの考え方や話しし方をすることが多いと思いますし、私は人文知に関わる研究・執筆をしていますが、これまで積み重ねられてきた法律や社会科学の知の体系を尊重を重視している方だと思います。

 しかし、例えば蓮舫議員の都知事選応援演説等においても露見した立憲民主党議員・前議員のジェンダー観(※2)をみるに、リベラル政党の方々が、自分たちが政策として掲げている価値の意味を自分ごととして身に着ける意味を切実に感じていない現状があると思います。与党批判の道具ではなく、まさに自分が内面化している価値の問題として性差による経験の違い、社会の構造について考えて欲しい。
 また、首都圏や都市生活者層以外の感覚も取り込んで、本気で左派的な価値観をあらゆる地域の生活や産業状況に応じて実現するには何が必要か、もっと真剣に考える方々に前に出てきてほしいと願っています。(これは前段と矛盾するように思われるかもしれませんが…追記が必要そうでしたら別の回に書こうかな。)

 というわけで、本気で若い世代や女性の価値観を政治の中心に持ち込み、政策に応じてその現場を知り、また専門知を持つ人を大事にするような中道左派政党を誕生させなければ!という危機感を持ってもらいたいなという願いを込めて、より左の党に投票するというのが、個人的なスタンスです。

全国規模の大きな天秤の左側に重りを一つだけ足すイメージ

右傾化

 国際的にみれば、欧米をはじめ各国で急激な右傾化が進んでいると言われています。日本でも、市民感覚としては急速に多様な価値観への言及の機会が増え、リベラルになっているように思えるけれど、特に外国との関係や国内における多文化共生について、排外的な言説が目立つようになっています。

 私は、他国の色んな事例を見て(それこそイスラエルとか)、「自分はもっとリベラルな世界を志向しているが…でも現実的には色んな事情があるしなあ」と、控えめな(?)投票行動をしていたら、気づいたら異様に右傾化した、排外的で好戦的な人達に政治を握られていて大変なことになることもある…という危機感を抱いています。

 投票行動というのは、自分が直接ものを書いたり何かを実施することに比べると、自分のアクションが与えるインパクトが小さいと思います。自分一人の行動を世間に発信するなら、自分の中で様々なバランスを取る必要がありますが、投票行動ではその必要はないと考えています。大きな天秤に左側に一人分だけ重しを足すという感覚で、自分の普段の行動・言動より「一歩左」に寄った投票をする。その結果、今回は比例も共産党です。

 それでももちろん、繰り返しますが、共産党の議員さんにもジェンダー観や人種観など問題のある人もいると思ってますし、現行の議会の状況や政治の状況の中で一歩でもましな未来を実現するために行動している議員さんのことはずっと応援しています。また機会がありましたら、寺田学議員の議会での質問などについて自分の知っていることをシェアしてみようかな。

 そういうわけで、私の投票行動観について簡単にですが語ってみました。投票権のある方はぜひ投票に行きましょう!

***

※1 自民党総裁選に立候補した加藤勝信議員の議員投票数が、立候補のために必要な推薦人の数20人より少ない16票だった。立候補するために推薦人を集め、一緒にカツカレーを食べて総裁選に臨んだはずの議員の中から実際投票する段になって「裏切り」が出たという状況。党内の様々な事情ゆえ仕方なく推薦人にはなったのか、本当のところは分からないけれど「投票の秘密」の大切さを改めて感じる。 https://www.nikkansports.com/general/nikkan/news/202409270000889.html 

※2 例えば、立憲民主党前議員、松尾あきひろ氏の応援演説。このように「良い女性」と「悪い女性」を分けられると思っていることが女性差別でなければなんなんだろうか。(ちなみに都知事選後、蓮舫さんの服だの、支持者のアクティビズムだのがやり玉にあがる一方、こういった部分が問題にもなっていないことにもかなり疑問を持っています。)

怠惰に暮らしたいトド
@tsukuru_ouu
立憲の前国会議員松尾あきひろ氏の蓮舫候補「応援」演説ですが、逆効果なので黙らせた方がいいです。

「蓮舫候補は攻撃されてもがきながら『ガラスの天井』を破ろうと戦ってきた」

「小池知事は有力者のおじさん・おじいさんに媚びて取り入って出世してきて今の地位がある」
2024/07/06 08:28
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